なぜ、あの人は自死を選んだのか。「遺された私」が見つけた、一つの「答え」【あさのますみ】《特別寄稿》
『逝ってしまった君へ』著者・大切な友人の自死を経た「遺された人」のこれから
わからないことがあるのは苦しい。理解できる方が、心の置き場所がある方が、苦しみはずっと少なくて済む。けれど、答えを無理に見つけようとしたり、湧き上がる感情に名前をつけて、曖昧なものまでそこに集約させようとすると、大切ななにかを取りこぼしてしまう感覚が確かにあった。
一人の人間が死に至るまでの心の動きを、あとから他人が完全に理解できるはずなどないのだ。すべてわかったと思うなら、それはきっとただの捏造だ。そのとき心の中にいる友人は、もはや本当の彼とは別の人だろう。
息ができなくて、立ち止まった。いつの間にか嗚咽していた。大きく深呼吸して、散ってゆく桜を仰いだ。
――どんな悲しみに襲われても、ここから先、わからないことをわからないままにしておける強さを、どうか私にください。
霊園の桜吹雪に祈った。空の青さが目に染みて、また涙がこぼれた。
文:あさのますみ